妖狐の花嫁
「まず、白が城の結界を解く。
吟はそれに気づいてすぐにこちらにやってくるだろう。」
「………。」
「その一瞬の隙に、俺が数体の"吟の分身"を放っておく。
それで家臣の動きは抑える。」
「分身……妖狐は妖術に敏感なのではないのですか?」
家臣にもすぐにバレてしまうのでは?
と、楼が静かに尋ねると
真はゆるく口角を上げたまま
奴に言葉を返す。
「俺は白妖狐の長だぞ?
家臣ごときに妖術が見破られるような低能ではない。」
「…なるほど。」
真の言葉に納得したように頷く楼。
確かに、真の力なら
家臣くらいは騙せる妖力は持ち合わせているだろうな。
…吟は、騙せないにしても。
「俺と仁と楼は結界が解け次第上から向かう。」
「貴方たちは私たちの羽に乗るわけですね。」
「そうだ。
家臣達は下から白と向かわせる。
鴉の家臣だけは上からだ。」
続けて説明をする真に
俺らは再び 静かにそれを聞く。
空からと地上からに分かれて
城に攻める、と言う。
吟が
結界の崩壊を知って
『娘』か『敵』か…どちらに向かってもいいように。