この恋に砂糖は使用しておりません
「伶先輩。すいません、こいつが危なっかしくて」
嫌な予感がする、と構える時間もないほどに、その声はあたしの脳内に入り込んでくる。
「ううん…愛海ちゃん?大丈夫?」
あたしよりずっと背の高い伶先輩に、顔を覗かれた。
大雅。
あたしじゃなくて、伶先輩と、登校してたんだ。
嫌味のない透き通った声に、ふわりといい香りが膨らむ長い髪の毛。
「…すみません。あたしは大丈夫なので」
作り笑いを浮かべて、何度か頷いた。
あたし、昨日、大雅と伶先輩が一緒に“ケーキ”の約束をしていた予定を壊した本人なのに。