この恋に砂糖は使用しておりません


信号が、点滅した。


「もう、たいががゆっくりあるいたせいで――「はしろう、あいみっ」


それは、ほんの数秒の出来事。


「えっ、ちょっと、たいが!」


あり得ない、何が起こっているんだろう。


ただ、あたしは状況を理解できなかった。


でも。


短い横断歩道を渡る、ほんの5秒間。


あたしの視界に入りこんできた、大雅の後ろ姿。


桜と一緒に揺れて、なびいた、その細い髪の毛。


――あたしは、大雅に手を引っ張られて。

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