この恋に砂糖は使用しておりません


あたしを見つめたその姿に、名前の分からない感情に襲われた。


「っ、もういいよ」


彼女の悔しそうな表情と、にじんだ涙。


それを言うなり、彼女はそのまま走り去って。


あたしは、ただ何も言わず、その場に立ち尽くすことしかできなかった。


「ごめん遅くなった、図書館行こう」


何事もなかったかのように続く、会話。


いや、きっと何事もなかったんだ、と。

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