この恋に砂糖は使用しておりません

学校までは小学生であるあたしたちが歩いて10分ほどだったから、きっと今のあたしが歩けば5分くらいで着いてしまうだろう。


そんな決して長くない通学路の途中に、一つだけ横断歩道があった。



偶然なのだろうけど、あたしたちはほぼ毎日その信号にひっかかっていた。


小学校低学年のころは『青信号が点滅したら渡ってはいけない』というルールを守っていたし、たとえ青信号が見えていたとしても大雅は走ったりしないから、次の信号に変わるまで立ち止まって待っていたのが理由なんだけど。


その日は夏の日で、日が昇る前でもじわじわとその暑さを感じるほどだった。


「ああ、きょうもあかだね」


あたしはため息を吐いたようにしてそう言いながら、横断歩道の前に立ち止まった。


あたしと大雅の靴が、並んで。


紐靴が面倒だと言って履いていた、マジックテープで締めるタイプのあたしのスニーカーには、前日の体育の時間で走ったときについた砂が、まだ残っていた。


あたしと大雅は同じクラスで同じ授業を受けているはずなのに、大雅のスニーカーには砂なんてついていなくて。


そういえば昨日の授業も、大雅は手を抜いて走っていたなぁ、なんて思い返していたときだった。

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