この恋に砂糖は使用しておりません


廊下を歩いていた生徒たちが、通りすがりにあたしを見ているのが分かった。


見て見ぬ振りをする生徒もいた。


ああ、周りから引かれてしまうほどに、あたしは大声で呼んだのだろうか。


そんなにあたしは、無我夢中で呼んだのだろうか。


理由なんて、あったのだろうか。


理由なんて、必要だっただろうか。


ふと、その背中は立ち止まる。


振り返る。


そして。


「え、何」


いや、何って、何よ。


そのセリフは、どちらかと言えばあたしが言いたいんだけど。

< 55 / 130 >

この作品をシェア

pagetop