この恋に砂糖は使用しておりません


「あいみは、おれといて、たのしい?」


――信号が、青になって。


横断歩道を渡ろうと、大雅の手を再び引いて、一歩踏み出した瞬間。


大雅は立ち止まったままあたしを見て、ただそれだけ言った。


今から9年前の言葉だけど、なぜかこの言葉だけはしっかり覚えている。


そして、そのときの大雅の表情まで。


少し不思議そうに、そしてなぜか、少し切なそうにも見えて。

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