この恋に砂糖は使用しておりません


そしてその視線を感じた時にはもう既に、あたしは口を開いていた。


「あ、あたし知ってる!その子って隣のクラスの子だよね!」


教科書から目を離して、そのまま大雅を見て。


満面の笑みを浮かべて、精一杯“他人”のフリをした。


時計の秒針が、チッ、チッ、と大きく鳴り響いて。


一瞬、あたしたち3人の世界が固まった気がした。


大雅の表情が、変わらない。


いや、変わっているのかどうかさえ今のあたしには分からない。

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