アナタのその恋、回収します
「あー……で、新藤さん、だっけ?」
借主の青年・鳥居坂さんは私の気持ちなどお構いなしに新藤さんに話しかけた。
「何でしょう?」
「あのさ、送迎はいらないから。もうコイツはオレのペットだし、飼い主らしく散歩させがてら帰っからさ」
「そうですか、わかりました」
新藤さんが社長室のドアを開け、私たちに退室を促す。
「では鳥居坂さん、くれぐれも契約に反することのないよう、お願い致します」
「はいはい、わかってるって」
私の気持ちなど完全に置いてけぼりで話がどんどん進んでいく。
でも、それに太刀打ちするだけの気力はもう私には残されてはいなかった。
(もう何だっていいよ……)
私は荷物を抱えて鳥居坂さんの後をとぼとぼとついていくだけで精一杯だった……

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