アナタのその恋、回収します
顔を引きつらせる私に、新藤さんは淡々と話し続ける。
「小林さんは我々と15年間のレンタル契約を結び、君を借りた。その後、更に君が成人するまでという条件で契約を更新したが……」
「それ以上は……レンタル料を払えなかったんだ」
新藤さんが一瞬言葉を淀ませた隙に、父がその先を口にした。
「お父さん……」
(こんな得体の知れない組織が要求してくるお金だもん……きっととんでもない額だったに違いない。私のために何年も無理してくれてたんだ……)
両親の苦労を思ったら、目の前の景色が滲んでくる。
「それでも新藤さんは半年待ってくれてね……新藤さんの立場もあっただろうにここまで無理をしてくれて、本当に感謝している」
父は新藤さんに静かに頭を下げた。
「それでは、借り受け希望者も何人かいますので、本日回収致します」
(ちょっと待ってよ!私、心の準備が……!)
背中に嫌な汗を感じながら3人の大人を代わる代わる見ていると、
それまで俯いて泣いていた母が突然立ち上がり、叫び出した。
「そんなの嫌っ!サキは私たちの娘です!」
「お母さん……」
「初めての運動会でパンダのおにぎりを頬張ってた姿も、中学の文化祭でお団子屋の屋台をやって団子を喉に詰まらせたことも……」
(え……何言い出してるの、この人……!?)
「高校の料理研究部で手打ちそばにがっついて鼻からおそばが出た写真も、全部なかったことになんてできませんっ!」
私の黒歴史をあられもなく披露する母に誰も何も言えず、
リビングには微妙な空気が流れる。
(お母さんは……こ、こういう人だったよ、昔から……)
母の言葉に父が苦笑した。
「どの子でも良ければ他でいくらでも探せたと思う。だがね、サキは初対面で母さんの指をぎゅっと握って、帰るまで放さなかったんだ。そんなお前に縁を感じたから、危険な組織が相手と承知の上でお前と暮らす決意をした……最後にこんな思いをさせてしまうのは、心苦しいがね」
「お父さん……」
無理やり引き出してきたようなあまりに寂しい父の笑顔。
(これは現実なんだ……受け入れなきゃいけないんだ……本当に、お別れなんだ……)
「新藤さん、この子が幸せな人生を歩めるよう立派な借主を選んでやって下さい」
そう言って頭を下げる父に、新藤さんは一瞬苦しげに眉を寄せた。
「……善処します」
「小林さんは我々と15年間のレンタル契約を結び、君を借りた。その後、更に君が成人するまでという条件で契約を更新したが……」
「それ以上は……レンタル料を払えなかったんだ」
新藤さんが一瞬言葉を淀ませた隙に、父がその先を口にした。
「お父さん……」
(こんな得体の知れない組織が要求してくるお金だもん……きっととんでもない額だったに違いない。私のために何年も無理してくれてたんだ……)
両親の苦労を思ったら、目の前の景色が滲んでくる。
「それでも新藤さんは半年待ってくれてね……新藤さんの立場もあっただろうにここまで無理をしてくれて、本当に感謝している」
父は新藤さんに静かに頭を下げた。
「それでは、借り受け希望者も何人かいますので、本日回収致します」
(ちょっと待ってよ!私、心の準備が……!)
背中に嫌な汗を感じながら3人の大人を代わる代わる見ていると、
それまで俯いて泣いていた母が突然立ち上がり、叫び出した。
「そんなの嫌っ!サキは私たちの娘です!」
「お母さん……」
「初めての運動会でパンダのおにぎりを頬張ってた姿も、中学の文化祭でお団子屋の屋台をやって団子を喉に詰まらせたことも……」
(え……何言い出してるの、この人……!?)
「高校の料理研究部で手打ちそばにがっついて鼻からおそばが出た写真も、全部なかったことになんてできませんっ!」
私の黒歴史をあられもなく披露する母に誰も何も言えず、
リビングには微妙な空気が流れる。
(お母さんは……こ、こういう人だったよ、昔から……)
母の言葉に父が苦笑した。
「どの子でも良ければ他でいくらでも探せたと思う。だがね、サキは初対面で母さんの指をぎゅっと握って、帰るまで放さなかったんだ。そんなお前に縁を感じたから、危険な組織が相手と承知の上でお前と暮らす決意をした……最後にこんな思いをさせてしまうのは、心苦しいがね」
「お父さん……」
無理やり引き出してきたようなあまりに寂しい父の笑顔。
(これは現実なんだ……受け入れなきゃいけないんだ……本当に、お別れなんだ……)
「新藤さん、この子が幸せな人生を歩めるよう立派な借主を選んでやって下さい」
そう言って頭を下げる父に、新藤さんは一瞬苦しげに眉を寄せた。
「……善処します」