アナタのその恋、回収します
その後、私はボストンバッグに最低限の荷物を詰め込み、新藤さんに「回収」されることとなった。

靴を履き終えた私を、玄関で母が抱きしめる。
「ごめんねサキ、サキ……」
「やだなぁ、もう。謝ることなんか、何もないんだよ?」
私は努めて明るく笑い、母の背中からそっと自分の手をどけた。
父も静かに母を後ろに引き戻す。
「母さん、こういう日が来ることは覚悟していたじゃないか……」
「ううっ……」
声を詰まらせる母の姿にこっちまで泣きそうになるが、
最後の砦の如く残った僅かな気力で私は両親に笑顔を向けた。
「お父さん、お母さん……私、2人の子で本当に幸せだった。体に気を付けてね……」

「サキィ!」
「新藤さん、行ってくれ!」
なおも私にすがりつこうとする母を引き剥がしながら父が言う。
新藤さんは、俯きがちに父に頷いた。

新藤
「失礼します」



そうして私と両親の間のドアは、新藤さんによって無情にも閉められた……



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