アナタのその恋、回収します

新藤さんが私を連れてきたのは、彼の「ボス」がいるらしいオフィスビル。
外観は何の変哲もないコンクリート製の小型ビルだが、
どこにも企業名らしきものは見当たらない。
その辺がいかにも「裏社会」という感じがする。

こぢんまりとしているようでもセキュリティは厚いようで、
建物内の随所に認証システムが設置され、
いくつものロックを解除しながら進む新藤さんに私はただただ無言でついていく。

そして、来客用に調えられていると思われる空き部屋に私を通すと、
新藤さんは、「いくらでもごまかしてやる」という宣言どおり、
釣り上げられた深海魚のように膨れ上がってしまった私の瞼を丁寧に冷やし、
更に念入りにメイクを施し見事にカムフラージュしてくれた。
(裏社会の組織の人間が、しかもイケメンが、女子にメイクとか……かなりウケる……こんな状況でさえなかったら)



そう……今私は見事に笑えない状況下にいる。



その後私が新藤さんに連れられた先は、
「社長室」と変に遠慮がちに表札を掲げた部屋だった。
室内は、アンティークな絨毯にデスク、応接用のソファにテーブル、
おまけ程度に置かれた観葉植物……と、
他の空間とは明らかに格式が違っていて、
言われなくとも「ボス」の部屋だと私でもわかるような場所だ。

その社長室のデスクで頬杖をつきながら私を睨む……イケメン。
私の背後に黙って立っている……イケメンこと新藤さん。
じっと私を見つめる……3人のイケメンたち。
(「イケメン」って単語がゲシュタルト崩壊起こしそう)
(これが純粋に合コンだったら嬉し過ぎて笑っちゃうんだけど……)
何か粗相をやらかせば……ただじゃ済まない、たぶん。

< 7 / 13 >

この作品をシェア

pagetop