恋してバックスクリーン
海津さんの運転で、食事に出かけた。後部座席に、寿彦さんと並んで座った。あのシーンを目撃しなければ、こんなにもうれしいことはないのに……。

「なにか食べたいものは?」

「私はなんでもいいよ。おふたりさんは?」

私たちふたりに気を遣ってくれるのが、穂花らしい。

「なににしようかな? 昨日はなに、食べたっけ?」

正直、楽しく食事なんて気分ではなかった。けれど、私たちのせいで場の雰囲気を悪くしたくはない。

「昨日は、カレーだったよね? 関さんは、なにを食べました?」

穂花が、寿彦さんに聞いた。私以外の女性をお腹いっぱい堪能したんやろ? と、心の中でつっこみ、哀しくなる。

「ラーメン」

私以外の女性が作ったラーメンですか? と、嫌なつっこみしか生まれない。

「ラーメンとカレーは無しで。どうしようかな? 寿彦の快気祝いってことで、焼肉でも食うか!」

「いいね」

寿彦さんが唯一、心を開いている海津さんの意見に乗っかり、車は焼肉屋さんを目指した。

こうなりゃヤケクソ! 食べて食べて食べまくるんやから!

< 22 / 74 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop