恋してバックスクリーン
その靴をじっとみつめて、立ち尽くす。見覚えのない靴だけれど、寿彦さんから私へのプレゼントなのかもしれない。なんて、自分自身に不自然な言い訳をした。

「……誰?」

その声にハッとして顔をあげた。声の主は髪の長い、綺麗な女性だった。

「あ、あ、あなたこそ、誰ですか?」

怯えながら、質問を質問で返した。

「え? ここ、関寿彦の部屋だよね? もしかしてあなた、寿彦の彼女?」

え? と言いたいのは、私の方で。でも、なにがなんだかわからない私は、うなずくのが精いっぱいだった。

「へぇー。寿彦、こんなにかわいい彼女がいるんだ?」

腕組みをして、笑いながら女性が言った。

「それじゃあ私、おじゃまになるから失礼するわ」

そう言うと女性は、そそくさと部屋を出ていった。そのとたん力が抜けて、その場に座り込んでしまった。

頭の中では混乱が生じていた。あの女性は、誰なのか? こんな時間にいったいなにをしていたのか?

「とりあえず、スーパー行こ……」

真実は、寿彦さんしか知らない。ポツリとつぶやくと立ち上がり、荷物を置いてスーパーに向かった。

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