恋してバックスクリーン
「羽島さん!」

急ぐ私を呼び止める声に振り向くと、爽やかな笑顔で手を振る、流星サンダーズのエース、加茂さんの姿があった。

「こんにちは! お疲れ様です。試合、観戦してましたよ! 敵ながらあっぱれでした」

早く自社のブースに戻りたくて、早口で言った。

「え? 敵ながらあっぱれ……?」

「彼氏が、青空スターズのショートなんですよ」

ボソッとつぶやいた加茂さんの言葉をかき消すかのように、穂花が慌ててそう言った。

「ちょ、ちょっと……穂花!」

そんなこと、加茂さんに言わなくても……。恥ずかしさのあまり真っ赤になる、頬。

「へぇー。関さん、もてるんですね」

「私たち急いでいるので、失礼します!」

穂花が、加茂さんの話も聞かず、私の手首を掴んで走り出した。

「莉乃、気をつけた方がいいよ」

「なにを?」

「加茂さん! 女遊びが激しいって噂だから!」

たしかに。イケメンのエースだったら、まわりの女性がほおってはおかないだろう。女遊びが激しくなるのも、うなずける。

「ははは。加茂さんは、そんなつもりで声をかけてきたんやないよ? 仕事の打ち合わせでお会いしたからやって!」

まぁ、加茂さんからすれば、私なんて恋愛対象外だろうよ。

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