恋してバックスクリーン

モヤモヤしながら、帰ってきた。気をとりなおして、ケーキを食べることにした。

「カフェオレ、飲む?」

「うん」

スティックカフェオレが置いてある棚に手を伸ばす。ふと、真っ赤な包装紙に包まれた箱の存在を思い出した。

そうや。今、みつけたふりをして、誰からもらったのか、聞いてみよう……。チラリと寿彦さんに視線を送ると、さっそくテレビをつけ、野球中継を夢中で観ていた。

「寿彦さーん、これ、なに?」

真っ赤な包装紙に包まれた箱を、持つ手が微かに震える。でも、声は明るさを保っていた。

「えー?」

案の定、見向きもしない寿彦さん。

「真っ赤な包装紙に包まれた箱。お菓子か、なんか?」

胸の鼓動は加速するのに、声は平静を装っていた。

「ああ、食べるの、忘れていた」

なんのことだか気づいた寿彦さんが、そう返事をした。

「誰から、もらったんかな……とか、思ったり……」

「おー! 入った!」

つぶやくように聞いた私の声は、ホームランの歓声とともに、かき消された。

小さくため息をつくと、お湯をカフェオレボールに注いで、くるくるとかき混ぜた。この、モヤモヤした気持ちもかき混ぜてしまいたい気分だった。

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