恋してバックスクリーン
いつの間にか、ソファで眠っていた。泣きながら眠ってしまったせいで、目が腫れぼったい……。

結局、寿彦さんは帰ってこなかった。私より先に帰ってきて、荷物を持って出て行ったのかもしれない……。

どちらにしても、会えなかった。最悪な朝、なにも食べる気がしない。とりあえず、冷蔵庫から炭酸水を取り出して、口に含んだ。

私が、悪い。寿彦さんに嫌な思いをさせた、私が……。出ていかないといけないのは、私の方なのに。

また、涙が湧いてきた。涙で滲む目で、携帯電話の画面をみつめた。

寿彦さんに電話をしよう。ちゃんと事情を説明すれば、わかってもらえるはず。

頭ではわかっているのに、震える指。別れ話をされるのが怖くて、電話ができない。

ひとつ、大きなため息をつくと、洗面所で顔を洗った。ここで抱きしめられたのが、遠い昔に感じられて、また哀しみがこみ上げてきた。

あかん。仕事に行かなければ。ゴシゴシと、力をこめて歯を磨いた。

< 48 / 74 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop