恋してバックスクリーン
③
いつまでも、寿彦さんのことばかり考えてはいられない。仕事の予定は山積みで、それをひとつひとつこなしていかなければならない。
ありがたいことに仕事が忙しい。寿彦さんが入る余地なんて、ないんやから。
午前中、がむしゃらに働いて、お昼前に職場に戻ってきた。
「莉乃、お疲れ様。お昼、一緒に行こう?」
穂花が、淡々とした口調で私を誘った。もしかして穂花まで、私を疑っているのだろうか……。「うん」と、ため息のような返事をした。
職場近くの、イタリアンレストランに向かう。
「莉乃、いつの間に加茂さんと……」
席に座ると開口一番、そう言った穂花。穂花がそう思ったのなら、寿彦さんだって同じように誤解するだろう。私と加茂さんがなにかしら関係を持っている……って。
「違うよ」
冷静になって否定をすると、テーブルの上のお冷を、いっきに飲み干した。
「加茂さんとは、仕事で名刺交換をして。一度、一緒に食事をしただけ」
「仕事で関わっただけの人が、どうして飲み会の迎えに来るの?」
「それは、私が聞きたい」
ふぅー、とため息をつくと、穂花が店員を呼んで、ランチをふたつ、注文した。
「関さんが、涼介くんの家にいる」
……やっぱり。海津さんのところでご厄介になっていたか。
「なにがあったの? 関さんはなにも話さないみたいだけれど」
穂花は、私が浮気をしていて、それが寿彦さんにバレて、寿彦さんが家出をしたと思っているに違いない。
「……なにもないのに」
そう小さくつぶやくのが、精いっぱい。これ以上、なにか話すと確実に泣いてしまうから。
「なにもないのなら、いいんだけれど」
穂花は、なにかを察したのかそれ以上、口を閉ざした。
ありがたいことに仕事が忙しい。寿彦さんが入る余地なんて、ないんやから。
午前中、がむしゃらに働いて、お昼前に職場に戻ってきた。
「莉乃、お疲れ様。お昼、一緒に行こう?」
穂花が、淡々とした口調で私を誘った。もしかして穂花まで、私を疑っているのだろうか……。「うん」と、ため息のような返事をした。
職場近くの、イタリアンレストランに向かう。
「莉乃、いつの間に加茂さんと……」
席に座ると開口一番、そう言った穂花。穂花がそう思ったのなら、寿彦さんだって同じように誤解するだろう。私と加茂さんがなにかしら関係を持っている……って。
「違うよ」
冷静になって否定をすると、テーブルの上のお冷を、いっきに飲み干した。
「加茂さんとは、仕事で名刺交換をして。一度、一緒に食事をしただけ」
「仕事で関わっただけの人が、どうして飲み会の迎えに来るの?」
「それは、私が聞きたい」
ふぅー、とため息をつくと、穂花が店員を呼んで、ランチをふたつ、注文した。
「関さんが、涼介くんの家にいる」
……やっぱり。海津さんのところでご厄介になっていたか。
「なにがあったの? 関さんはなにも話さないみたいだけれど」
穂花は、私が浮気をしていて、それが寿彦さんにバレて、寿彦さんが家出をしたと思っているに違いない。
「……なにもないのに」
そう小さくつぶやくのが、精いっぱい。これ以上、なにか話すと確実に泣いてしまうから。
「なにもないのなら、いいんだけれど」
穂花は、なにかを察したのかそれ以上、口を閉ざした。