恋してバックスクリーン
双子の妹、聖子さんは、仕事の関係でシンガポールに住んでいた。シンガポールでの仕事を終えて、最近、日本に帰国。シンガポールで知り合った彼と結婚することになり、寿彦さんにスピーチをお願いした。

「でも、オレ……そういうの、苦手」

スピーチをお願いする際に、赤い包装紙に包まれたトリュフをもらった。『久しぶりに会えて、うれしかった』のは、海外から久しぶりの帰国だったからだ。

インフルエンザのとき、寿彦さんの部屋に泊まったのは、「世話好きで、ほおっておけない性格」だから。私からのメールも、聖子さんが返信したようだ。丁寧な返信だったのは、そんな理由からだった。

勝手に部屋にあがりこんでいたのは、彼女がいると知らずに部屋の掃除をしていたから。(私の存在を知ってからは、姿を見かけなくなった)

今日は、実家から預かったものを、届けにきたらしい。鍵は、寿彦さんが学生時代、この部屋に住み始めてからずっと持っていた。

これで、寿彦さんの浮気は白だと判明した。やっぱり、寿彦さんが浮気なんてできるわけがなかった。

「……聖子を、浮気相手と勘違いするなんて……」

寿彦さんが、苦笑いをして見せた。でも、笑い事じゃない。本気で悩んだんやで? 私は! ちょっとむくれてみた。

「怒っている?」

「怒っているわ、めっちゃ!」

そう言う私を、寿彦さんがそっと抱き寄せた。

「怒っている顔、かわいい」

そんなふうに言われると、怒るに怒れない。寿彦さん、ずるいよ。

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