恋してバックスクリーン
無愛想な男、本気を出す

そして迎えた、試合当日。朝から小雨が降り、グランドコンディションは悪かった。プレイボールの十三時前には雨があがったのが、幸いだった。

ジメジメとした空気を含んだ、生温い風が吹いた。私は、穂花と一緒にスタンドに座っていた。

今日も、寿彦さんは左手に包帯を巻いていた。何度聞いても、うまい具合にはぐらかされ、症状はよくわからなかった。

やっぱり、まだ痛いのかな? 痛くなかったら、包帯なんてしないはず。

ねんざか、最悪の場合は骨折? でも、骨折していたら、腫れあがって痛みも激しいみたいだし。

今も、涼しい顔でキャッチボールをしている。試合に影響がでないように、包帯を巻いているに違いない。悪いようには考えないことにした。

私はただ、寿彦さんを信じるしかなかったけれど、不安な気持ちに支配され、口数が減っていた。それを察してなのか、穂花も黙って私に合わせてくれていた。

ありがとう。小さく心でつぶやいて、プレイボールがかかったグラウンドを黙ったままみつめていた。


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