恋してバックスクリーン
打球は、鋭い当たりでショートの寿彦さんのグラブを弾くと、レフト方向へと転がっていった。

その間に、三塁ランナーが生還し、流星サンダーズがさよなら勝ちをおさめた。

「ああ……」

ため息のような声が漏れた。加茂さんの鋭い当たりを捕らえられなかった寿彦さんは、空を仰いで倒れたまま、しばらく動こうとはしなかった。

同じように空を仰ぐと、雲の切れ間から青空がのぞいていた。

試合には負けたけれど、なんだか清々しい。グラウンドに視線を送ると、選手たちが中央に集まり、一礼をして、健闘をたたえあっていた。

スタンドからは、両チームの選手たちに惜しみない拍手が送られた。寿彦さんはうつむき加減で、ベンチに引き上げていった。

今すぐ駆けつけて、抱きしめてあげたい。そんな気持ちになった。
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