恋してバックスクリーン
「お疲れ様」

そんなふたりのそばに、加茂さんが近づいてきた。不細工な顔をますます見せることができなくて、うつむいた。

「いやぁ、惜しかったね。青空スターズ」

上から目線で嫌味のように言われたけれど、反論の余地はなかった。

「僅差だろうが、大差だろうが、負けは負けです」

寿彦さんが低い、小さな声で言った。

「約束、守ってくれる?」

加茂さんの言葉に、うつむいた視線を寿彦さんに向けた。今までに見たことのない、悔しさがにじみ出るような表情をしていた。

「約束は……約束ですから……」

もともと小さな声が、さらにトーンを下げると、突然、加茂さんがゲラゲラと笑いだした。わけがわからず、私と寿彦さんが顔を見合わせた。

「関さんは指を骨折しながらホームラン打つし、莉乃ちゃんはマウンドに届くくらいの大声で応援するし。ふたりとも、バカ正直すぎる!」

「骨折!?」

加茂さんの言葉に反応すると、寿彦さんがムスッとした顔でため息をついた。

「そう。骨折した指で、オレの打球なんて取れないのに。どこまで野球バカなんだよ?」

鋭い当たりがグラブを弾いたのは、そういう理由だったのか……。

「オレには野球しかありませんから。煮るなり焼くなり、お好きにどうぞ」

寿彦さんはそう答えると、私の背中を押して、加茂さんの前に突き出した。頬を真っ赤に染める私を見て、加茂さんがまた笑った。

「そんなにムキになられても。ちょっとからかっただけなのに」

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