恋してバックスクリーン
「からかう……って?」

ふたりして、ぽかんと口を開けると、加茂さんに視線を送った。

「ナイスゲームでした!」

加茂さんはそう言い残して、ぽかんとするふたりを置いて、球場をあとにした。

「ナイスゲーム! やってさ……」

そうつぶやくと、なんだかおかしくなって笑った。寿彦さんも、噴き出し笑いをした。

「それより寿彦さん! 骨折ってホンマなん?」

真意を問うと、決まり悪そうな顔をした。

「それで野球とか、寿彦さんはどんなけ野球バカなんよ?」

お天気雨のように変わる、私の心模様。うれしいのか、哀しいのかわからないけれど、今度は涙がこぼれてきた。

「気づいてあげられなくて、ごめん」

「『ごめん』って言われても、痛いもんは痛い」

ブツブツとつぶやくと、骨折していない方の手で、私の手を握った。

「帰ろ? 我が家に」

「うん」

大きくうなずくと、肩を並べて歩いた。雲が切れ、ほんの少しの青空が、私たちを明るく包んだ。

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