恋してバックスクリーン
寿彦さんに会話の主導権を握ってもらおうとしたけれど。アイスクリームの話をした後から、会話はぷっつりととぎれた。

でも、大きくて温かな手は、私の手をしっかりと握ってくれていた。それだけでいい。むしろ会話はいらなかった。

「わぁー! すごい綺麗!」

キラキラと、夜景が輝く。シンボルマークの日本丸を目にして、桜木町駅の近くまで来たことに気がついた。

寿彦さんの案内で、メモリアルパークの芝生に腰を下ろし、横浜の眩しいくらいの夜景を眺めた。

「莉乃ちゃん」

紙袋は、寿彦さんが持っていた。その中から、小さな箱を取り出した。

「結婚、してください」

ストレートなその言葉は、胸のストライクゾーンのど真ん中に突き刺さった。

「はい!」

笑顔で返事をすると、寿彦さんは小さな声で「よかった……」とつぶやいて、笑った。

「これで、心の扉は全開?」

そう聞くと一瞬、不思議そうな顔をしたけれど、すぐに気がついたのか、「ああ」と、返事をして、私をまっすぐにみつめた。

「だって、オレの嫁だから、ね?」

ギュッと繋いだ手に、永遠を感じた。そんなふたりを横浜の夜景が、祝福するように光輝いている。そんな夜だった。

(おしまい)


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