私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。



「うん、8月7日」

「やっぱそーだよな」


一護、私の誕生日覚えててくれたんだ……。
なんか、嬉しいな……。


「このピアス気に入ったのか?」

「ん?あぁ……なんか、いい感じだなーって」

「買うのか?」

「うーん……いいや」


理由は、このピアスを買ってしまったら、このピアスを見るたびに一護を思い出しちゃうから。


だって………そんなの、辛い。
叶わない恋を思い出して、泣くなんて、そんなの…悲しい。


黙り込んでいると、「椿?」と一護が、心配そうに私の顔をのぞき込んできた。


「………だ、大丈……って、わっ!!」


いつの間にか俯いていた顔を上げると、一護の顔が予想以上に近いことに気づく。


「そうか、ならいい」


顔が近いよ、一護!!

心の中で叫びながら、私は一護からズサッと後ずさった。


「それじゃあ、他の店も見てみよーぜ?」

「う、うん……」


一護は、いたって普通だ。

ドキドキしたり、ハラハラしたりするのは、私だけ。

それは、なんだか不公平だな…なんて。

そんなことを考えながら、私達はまたお店を見て回る。ショッピングモールを出て帰路についたのは、16時を回った頃だった。




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