私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。
夏の夜にキミと眠る
***
ついに、夏休みがやってきた。
7月末、部活もない私は、朝から『Cafe・FELICITE』のバイトに明け暮れていた。
何かをしていた方が、何も考えずに済むから。
「ありがとうございましたー!」
お客さんを送り出して、カフェの外に広がる青空に目を向ける。
雲1つないや……。
しかも、すっごく暑い…。
そこにいるだけでサウナにいるかのようにジワリと汗が滲んだ。
カフェの冷房が恋しくなって、店内に戻ると、今のお客様が最後だと気づく。
「昼前だから、客足が引いたわね」
「店長」
やわらかく微笑む店長が、私の所へやってきた。
「でも、また昼から忙しくなりますね」
「藍生くんのパスタがあるからよね」
だって、お昼には厨房の藍生先輩のパスタ目当てにお客さんが殺到する。
藍生先輩は、チャラいけど、料理の腕は確かなんだよね。
店長の言葉に頷いて、お腹がグーッとなる。
「あら、椿さんお腹空いたの?まかない食べて、休んできていいわよ」
「ありがとうございます」
恥ずかしい、まさか店長の前で鳴っちゃうとは…。
お腹をさすっていると、一つに束ねた髪を後ろからクイッと引っ張られる。