私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。


「なんだよ一護〜、邪魔するなって」

「近すぎるんすよ、藍生先輩が!!」

「なんだよ、2人して急に仲良くなっちゃって」

「もとから仲いいんす、俺らは」


もとから…。
その言葉に胸がときめく。


「あ…」

でも、ときめいちゃだめ。

好きになってはいけないから、友達として、嬉しいって、思わないと……。


そっと胸を押さえて、私は切なく笑う。


「な、椿?」

「えっ……な、なんの話だっけ?」

「おい、聞いてなかったんかよ?」

「ははは、ごめん」


私の顔をのぞき込んでくる一護に、ごまかすように笑って距離をとる。


すると、トンッと背中に何かが当たった。


「あっ、ごめんね」

「えっ……」


突然聞こえた声に、私が人にぶつかったのだと気づく。
振り向くと、お盆を手に驚いている瑞希先輩がいた。



「あっ、瑞希先輩ごめんなさい!」

「ううん、それより椿ちゃんは大丈夫?」

「は、はい…」

「…………」

瑞希先輩を振り返ると、先輩は私の顔を見て一瞬黙り込む。






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