私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。


「っ………」


なんで……今更、慣れたはずの嘘に、涙が出るの……。
どうして、一護は優しくしてくれるの…。


遠ざけても、遠ざけても、一護への想いは膨れていくばかり。お願いだから、優しくしないで……。
失ったらって考えたら、身を引き裂かれそうになる。


「話しては……くれねぇんだろ」

「……………」


優しく頭を、髪を撫でられて、ハラハラと涙が流れていく。
切なげに歪められた一護の顔を見上げたまま、私は何も言えずにいた。


だって、何が言えるの……?

2人を傷つけるって分かってて、自分の気持ちを押し付けるなんて、できない。


知らない方がいい、聞かないで。

きっと、優しいキミの事だから、私なんかの為にも、傷ついてしまう。


傷つけたくないから、昔の私に戻ろうとしたのに、それすらも意味がなくなった。


私は……どうしたらいいの?
もう、何もかもが分からない、考えたくもない……。



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