私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。
夕立にさよならのキスを
***
翌朝、私は誰かの温もりに、包まれながら目が覚めた。
最初に視界に入ってきたのは、茶色くクセのある髪。
なんとなく、それに手を伸ばそうとして、体が動かせない事に気づく。
私の体は、深く抱き込まれていた。
スンと鼻を効かせれば、石鹸の匂い。
閉じられた瞼から伸びるまつ毛が長いな…なんて、考える。
「一護……」
「ん……ぅ」
名前を呼べば、まるで返事をするように唸って、身じろぎをしだす。
「どうして、傍にいてくれたの……?」
眠っている一護が起きてしまわないように、呟く。
私の事なんて、ほっとけばいい。
紗枝の事だけ見ていたら良かったんだ。
「優しくされるのは……辛いよ……」
まだ朝早いからか、日は昇りきっていない。
囁かな太陽の光が、私たちを照らしている。