私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。



「ごめんね、紗枝…」

「ううん、それはいいけど……。椿、なんかあった??」


紗枝が、私に傘を傾けながら、心配そうに顔をのぞき込んでくる。

紗枝に見られたくなくて、私は俯いた。


「……紗枝、このまま真っ直ぐ行って、風車が回るお店の前、温泉街の通りの真ん中に、一護がいるよ」

「え、どうして椿がそれを知ってるの?」

「………紗枝、よく聞いて」


私は、顔をあげて紗枝の手を両手で握りしめる。

すれ違ってしまった2人の想いをつなごう。

私が、バラバラにしてしまった、この恋へ罪滅ぼしをさせてほしい。


「一護は、紗枝が好きだよ」

「っ……え!?」


驚いている紗枝に、私は小さく笑みを浮かべる。
必死に、ちゃんと笑えてるかな。


たとえ心の奥底に、忘れられない想いがあっても、紗枝と一護のこと、すごく大切だから…。





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