私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。
「紗枝のこと、高校一年生の時に好きだって聞いてた。黙ってて、ごめんね」
「そ、そんな……一護くんが、私を??」
嬉しさと驚きで動揺している紗枝に、笑いかけ、繋いだ手に力を込めた。
「追いかけてあげて、紗枝」
私が傷つけてしまったあの人を、癒してあげて。
それは、きっと紗枝にしかできない。
「でも……」
紗枝は、私に気を遣ってるのか、その場を動こうとしない。
「私に傾けてくれた傘を、一護に差してあげて。きっと、この雨に震えてる」
「椿……」
「ほら、さっさと行く!」
そう言って、ポンッとその背中を押す。
すると、紗枝はそのまま走り出して、少し先で私を振り返った。
「椿、ありがとう!!」
その必死な顔に、一護への真っ直ぐな想いを感じた。
紗枝、きっと紗枝じゃなかったら、私はこの恋を諦めたりしなかった。