私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。
「椿ちゃん、どこだったの?」
尚くんが、席を尋ねてくる。
「廊下側の真ん前だよ」
「え……」
後ろで、一護が小さく声を上げた気がした。
一護…私と離れること、どう思ってるのかな?
何にも、感じてない…なら、少し寂しい。
一護に気づかないふりをして、尚くんを見る。
「なら、俺斜め後ろだ!またよろしくな、椿ちゃん」
尚くんが近くにいるんだ……。
それは、良かった。
一護とは……もう、バイト以外で接点も無くなる。
「紗枝は、どこだったの?」
振り返ると、紗枝は私にクジを見せる。
そこには、10番とかかれており、一護と列は違うけど隣だった。
「良かったね、紗枝」
「…………………うん」
ひどく、長い間があったような気がする。
やっぱり、紗枝の様子がおかしい。
なんだろう、やっぱり一護と何かあった?
それとも私のこと……?
「じゃあ、席移動してくださーい」
悶々としていると、クラス委員の声でクラスメートがいっせいに動き出す。
考えてもたどり着かない答え。
面と向かって紗枝に聞けば分かるのに、聞けずにいるのは…。
ギュッと紙を握りしめて、立ち上がる。
私が、嘘を重ねてきたからなんだろう。