私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。


「答えて……くれる?」

「………紗枝、私はもう二度と、紗枝に嘘つかないって約束する。昨日は、傷つけてごめんね…ごめん、紗枝」


泣きそうになるのを堪えて、許してもらえるように、真実を口にする。


すると紗枝は、小さく笑った。


「なら……椿の気持ちが知りたい。そうしたら、許してあげる」


優しい、笑だった。
まるで、私の背中を押すように、柔らかく微笑んでいる。


「椿の好きな人は……誰?」


ードキンッ

心臓が跳ねて、私は息を呑む。
そして、ゆっくりと吐き出すと、真っ直ぐに紗枝を見つめた。


「……私の好きな人は、一護だよ」


声が……震えた。
今まで必死に隠し続けた秘密を、明かすのは勇気がいる。


だけど、親友の紗枝に、もう嘘はつきたくないから…。


すると、紗枝は笑みをさらに深めて、涙を浮かべながら、階段を駆け上がってくる。





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