私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。
Chapter 1 *冷たい嘘*
涙の雨が降る
……いつからだろう。
キミが私の一番大切な人になったのは。
『俺、滝川 一護!!隣の席になったのも何かの縁だし、仲良くしよーぜ』
そう、高校1年生の春。
窓際の席、ヒラヒラと舞う桜と、温かい風を背に、キミは笑った。
その瞬間の衝撃ときたら、まるで春の嵐のように私の心をざわつかせ、一瞬にして、キミに目を、心を奪われる。
『なぁ、お前の名前は?』
もっと声を聞きたい、もっと話をしたい、もっとキミを知りたい。
今まで、こんなに誰かの事を考えたり、知りたいと思った事は無かった。
『つ、椿……。宮野 椿…』
『椿……よろしく!』
それが恋だと気づいたのは、名前を呼ばれた時、全身、指の先まで幸福感が広がり、甘く痺れたから。
私の心にも、春がやってきたのだ。