私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。


キィィッと、錆びた音と共に開く扉。
それに、背を向けていたキミが振り向く。


「……椿……」

「一護……」


屋上へ出ると、扉が風で、バタンッと閉まる。
これで後戻りは出来ない……。


「紗枝に、ここで話したいことがあるって言われたんだけど…」

「実は、私も紗枝にそう言われてたの」


「なんだよ、紗枝が仕組んだのか」


困惑気味の一護に、私は少しだけ近づいて、立ち止まる。
すると、一護が私に向き直った。


今度は、私の番。
さっきは、紗枝が私に会いに来てくれた。

今度は、私が一護に会いに来たんだ。


「一護、私の話を聞いてほしいんだ……」

「……話って、なんだよ…」


その冷たい言い方に、また怯みそうになる。

すると、それを感じ取ったのか、一護が「いや、悪い」と言って首を横に振った。




< 201 / 211 >

この作品をシェア

pagetop