私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。
「一護……?」
「違う、椿を怖がらせたいわけじゃない。ただ……不安だったんだよ、お前にまた突き放されるんじゃないかって…」
「………一護……」
私、何度一護を嫌いだと言って遠ざけたんだろう。
一護に、私への想いがなくても、傷つくに決まってるのに…。
「不安にさせて、傷つけてごめんね。私、ずっと……自分の気持ちを隠すために、嘘ついてた…」
ポツリと話し出すと、一護は静かに私の話に耳を傾けてくれる。それにホッとして、私は一つ一つ大切に伝えていった。
『応援してる』
「応援してるなんて、嘘だよ。本当は……私だけを見て欲しいって、考えてた…」
初めについた嘘から、1日1日、時計の針が時を刻む度に私の本心を覆い隠そうと重ねていった偽り。
『私の好きなタイプは、年上で大人の人だから』
「年上が好きとか、一護とは正反対の人が好きって言ったのも、私の本当の気持ちがバレないための嘘……」
2度目についた嘘。
それは、私自身の心さえ騙そうと必死だった時の嘘だった。
「本当は、バレないようにするための嘘だった……」
「俺は……あんときからずっと瑞希先輩に負けたくねぇって勝手に思ってた」
「…一護…」
そんな風に、思っててくれてんだ……。
心配しなくても、私は一護しかみてないのに。
だけど、あの時の私はそれを素直に言葉にする勇気がなかった。
『一護なんて、嫌いだし』
「嫌いだなんて嘘……本当は、誰よりも一護を……」
3度目についた嘘で、私は自分の想いに蓋をしようとした。
キミなんて好きじゃない、嫌い……そう思って、何度も自分に言い聞かせて……。
でも、好きが溢れて、結局止められなかった。
それでも、私には嘘をつくことしか出来なかった。
自分を守るため、そして2人を守るために本当に必要だと思ってたから…。