私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。
「はぁ……」
「大丈夫?椿ちゃん」
ボーッと、心ここにあらずにテーブルを拭いていると、隣に瑞希先輩がやってきた。
「すみません、空気悪くしましたか?」
「それはどうでもいいよ、俺は椿ちゃんのココが大丈夫かって聞いてるんだけど?」
瑞希先輩は、自分の胸をトントンと指でさす。
私は、それにぎこちなく笑みを向けた。
「ちょっと、大丈夫じゃなかったです」
「まぁ、そうだよね…」
瑞希先輩が、一緒にテーブルを片してくれる。
私は、掃除なんて建前だったから、同じところを何度もふきんでなぞっているだけ。
何も言わずに、傍にいてくれる。
その優しさに、少しだけ心が救われた気がした。