私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。


***

「お疲れ様でしたー」


先輩たちより1時間早くあがった私は、カフェの前で雨の降る空をぼんやりと見上げる。

私の家はここから歩いて20分のところにある。

たぶん、靴もビチョビチョになるだろうなぁ…。

げんなりしながら、一歩を踏み出した所で、「げっ」という声が聞こえた。

振り返れば傘を開いたり閉じたりして困った顔をしている一護がいる。

一護も、同じ時間の入りで、上がりだったんだった…。


「何やってんの、一護」


つい、声をかけると、ムッとした顔をして、

「お前には関係ないだろ」と、顔を背けられた。


「あっそ!」


やっぱり、冷たい。

なのに、どうしてこんなに……気になるの。
惚れた弱みか…なんてため息をつく。


たぶん、傘が壊れたんだろうな。

開けたり開いたりしてるのに、何箇所か骨が折れてるのか、ちゃんと開ききってない。


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