私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。
「い、一護が引っ張ったからでしょ!?」
「う、うるせぇ、仕方ないだろ!」
「何が仕方ないの!?」
売り言葉に買い言葉で、またもや始まる口喧嘩。
私は顔の熱が引いたところで、一護を振り返った。
「手、離してくれる?」
「ハイハイ、喜んで!」
一護は不機嫌丸出しで、掴んでいた手をパッと離す。
そして向き合った所で、一護が傘を持っているのに気づいた。
「それ……」
私が昨日貸した傘だ……。
まさか、返しに来てくれたの?
それに、騒いでいた胸が鎮まっていく。
「……お前の、返す」
「う、うん……」
渡された傘を受け取ると、まだ何か言いたそうに私を見る一護。首を傾げると、一護はそっぽを向いた。