私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。

「焦った……紗枝、振り向きそうだったんだよ」

「……好きな人なんでしょ、なんで避けんのよ」

「仕方ねぇだろ、紗枝にどう声かけていいのか、わからねぇんだよ!」


あぁ……なんで私、一護の恋愛相談受けてるんだろう。

一護の口から、紗枝って名前が出る度に、胸が痛むのに。

大好きな人たちだから、嫌いになんて、なりたくないのに…。

私は、嫉妬で黒く汚れていくみたい。
嫌だな、こんな私……。


ゆっくりと顔を上げれば、久しぶりに見た、澄み渡る青空。最近は、雨続きだったのに……。


「お前はさ、瑞希先輩のどこに惚れたんだよ」

「……え?」

ふと、隣に座る一護から尋ねられる。

私が好きなのは、一護なのに……。

それは、すごく残酷な質問だと思った。

だけど、私がついた嘘でもあるから……。



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