私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。
「好き、好きだよ……」
本当は、嫌いなんて嘘。
こんなに苦しくて、涙が出るほどに好きなのは、一護なんだよ。
「どうして伝わらないの……どうして…っ」
どうして、キミを好きになってしまったんだろう。
どうしてキミじゃなきゃいけなかったんだろう。
「どうして……消えないのっ…」
たくさんのどうしてに、ポロポロと涙が出る。
誰もいなくて良かった……。
この涙も、想いも、言葉も……全ては秘密にしなきゃいけないものだから。
そっと、制服の袖で、涙を拭う。
その瞬間に、カタンッと、物音が聞こえて、ハッと顔を上げた。
すると、そこには……。
「お前、こんな所で何してんだ……?」
1番会いたくて、会いたくない人がいた。
相反する思いに戸惑いながら、私は耳にかけた髪を戻して、俯く。
髪が長くて良かった、私の顔を隠してくれるから……。