私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。
『バスケ部ってだけでカッコイイ人いそう!』
『コラコラ紗枝、見た目のイイヤツなんて、ろくなヤツいないからね?』
私の腕を掴んで、グイグイ引っ張る紗枝に苦笑いを浮かべながら、私達は体育館にやってくる。
『ほら、椿もしっかり探して!!』
そう言う紗枝には、入学式の日に、私が一護に一目惚れした事を、話せずにいた。
だって、なんだか照れくさくって、もう少し気持ちに整理がついてからでもいいかなって、思ってたから。
『はいはい、分かって……』
私は、そう言いかけて、口をつぐむ。
ーダンッ、ダンッ
ボールが地面にバウンドする音が聞こえた。
紗枝と同時に、音の方へ視線を向ける。
『ふっ!!』
そこには、バスケットゴールに向かって飛ぶ男子がいた。シュッと、ゴールの中にボールが入る。
制服を着たままのその男子は、見事にシュートを決めた。
『バスケ経験者か!?』
『いや、授業でかじった程度っす』
『お前うちのバスケ部入れって、才能あるからさ!!』
『いや、帰宅部希望なんで』
ゼッケンをつけた先輩達に囲まれながら、笑うその男子に、私は見覚えがあった。