私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。
『あれ、一護だ……』
隣の席の、滝川 一護。
入学式の時、自己紹介したあのキラキラした眩しい笑顔を思い出す。
私が、一目惚れした人。
好きな人が、そこにいた。
『ねぇ紗枝、かっこよかったね……って、え?』
感動して、私は紗枝の方へと視線を向ける。
すると、紗枝は息もしてないんじゃないかと思うくらいに、一護を見つめたまま、固まっていた。
『紗枝……?』
嫌な予感がした。
まさか、まさかと思いながら、確信には触れられずにいる。
『ふ、ふぇ!?』
もう一度声をかけると、紗枝はハッとしたような顔で、私を振り返った。
私の方が162㎝と少し背が高いので、150㎝の紗枝が、私を見上げるような形になる。
紗枝は、まるで桜の花のように頬を桃色に染めていた。
『ど、どうしよう、椿!!』
『う、うん……』
興奮したように私の肩を掴む紗枝に、どうかこの予感が当たりませんようにと願った。
そして、紗枝の言葉を緊張しながら待つ。