私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。
「なぁ、どうしたら昔みたいに…」
ーズキンッ、ズキンッ……。
まただ……。
また、昔の私って、一護は言う。
私は足を止めて俯くと、一護も慌てたように止まり、傘を私に傾けた。
「言ったはずだよ……もう、昔の私になんて戻れないって…」
だって、昔の私は一護に恋したばかりの私だ。
純粋に一護を想って、素直に甘えられた私。
そして、今は……嘘を重ねて、大切な人たちを騙して、歪んだ嫉妬に塗れた、秘密の恋をしている。
隠してきたこの恋心を否定されること、それは今の私を否定されるのと同じことだ。
忘れたくても出来ない、それなのに…。
「何でだよ……お前、いつもそれだよな」
「………」
「また、だんまりかよ……。俺からどんなに歩み寄ろうとしたって、これだ。前の俺等なら、何だって話せたじゃねーかよ!!」
………それは、一護が恋愛相談してきた時のこと?
どんな事でも話せるって……私は、それが苦痛だった。
「何だって話せた?それを、どんな気持ちで……っ」
自嘲的な笑みを浮かべて呟いた声が、震えた。
最後は吐息だけが漏れるようにかすれる。