私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。
「良いのか、宮野?」
隣の席は東野くんで、事情を知ってるからか、気遣うように声をかけてくる。
「うん、これでいいの」
ぎこちなく笑うと、東野くんは困ったように首を傾げた。
「……の割には、辛そーだな。本当にそれでいいのか?」
「……いいとか、そういうんじゃないの。そうしなきゃ、いけないんだよ…」
私さえ黙っていれば、穏便に済むのに、わざわざ告白なんてして、かき乱すこともない。
「なんか、難しく考えてんだな、宮野って」
「え?」
「うーん」と、伸びをして言った東野くんの言葉に、今度は私が首を傾げる。
すると、意味深に笑みを浮かべて、東野くんは私を見つめた。
「恋とか、そういう感情で動くもんはさ、頭でどんなに考えたって、制御できないって、俺は思うけど」
「……っ」
それは、分かってる…。
でも、それでもやらなきゃ、いつか私の心が壊れてしまう。
嫉妬して、汚れていく自分を、もう見たくない。