私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。


ーーー私は一護に嫌われてる。


そう、初めはこんなじゃなかった。

私たちが、こうなってしまった理由は、明確で、一護が、私の親友……紗枝を好きで、紗枝も一護が好きだから。

そして……私が、一護を好きだからだ。


「本当にお前と喋ってると、イライラすんな」

「なら、話しかけないでよ」


私は、好きな人に好きだと悟られないように悪態をついて、必死に嫌いなフリをする。

この想いを隠さなきゃいけない。
手っ取り早かったんだ、嫌われた方が……。


口喧嘩をしながら、3年A組の教室へやってくると、「2人とも〜、おはようっ」と笑顔で駆け寄ってくる紗枝。

栗色のショートヘアーに、クリクリの瞳、女の子らしい紗枝は、花が咲くような笑顔を浮かべた。

「うっ……よう、紗枝」

「ふふっ、おはよう、一護くんっ」


恥ずかしそうに頭を掻く一護に、嬉しそうな顔で笑う紗枝。

頭を掻く仕草は、一護が緊張してる時の癖だ。
そんな事まで分かってしまう自分に嫌気が差す。

私は2人からそっと視線を反らした。


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