私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。
アスファルトを見つめて、ボーッとする。
今の時刻は9:45で待ち合わせは10:00。
気持ちばかりが高ぶって、早めに出てきてしまった。
映画は、ここから2駅行った先の大きいショッピングモールの中にある映画館で10:50の回だ。
頭の中で、シミュレーションする。
って、ただ遊びに行くだけなのに、何シミュレーションなんて、してんだか……。
苦笑いを浮かべていると、ツカツカと明らかに私に近付いてくる靴音が聞こえた。
「椿、悪いっ、待たせた!!」
顔を上げると、手を上げながらこちらに近づいてくる一護がいた。
わっ……一護、相変わらずお洒落……。
白のシャツに紺のボーダーTシャツを重ね着して、スラッとした足にフィットする黒のパンツ姿。
リングの形をしたネックレスがアクセントになっていて、まるでテレビの中の芸能人みたい。
まだ仲が良かった時に遊びに行った時も、一護は周りの人の視線を集めるほどに、カッコよかった。
「なんだよ?ボーッとして」
「う、ううん……なんでもないよ」
…………無自覚、鈍感?
軽く首を傾げる一護が、直視できない。
その仕草だけで、周りに花が咲いてるんじゃないかと思うほどに華やかさがある。
私、今更ながら物凄い人と遊びに来ちゃったんじゃ……。
一護のキラキラオーラに、圧倒されながら、私は改めて一護を見上げた。