私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。


「椿、マジでスポーツやってなかったのかよ?」

「うん、体育でやっただけ。一護こそ、バスケ経験者じゃないの?」

「俺だって、授業でだけ」


一護、やっぱ運動神経いいよね。

授業だけで、あそこまで動ける人なかなかいないけど。
私は、体育の授業の事を思い出していた。


「あの時、授業でシュート決めた一護、すごかった」

「え、マジ?」


驚いている一護に、私はハッとする。

やだ、私何口走って………。

自分が言ったことに気づいて、カァーッと、恥ずかしくなった。


「それで、俺のバスケ、どうだったよ?」

黙り込んでいると、一護がウズウズしたように身を乗り出して聞いてくる。


「あ、えーとね、すごく……」


そこには、バスケットゴールに向かって飛ぶ一護の姿。

私の好きな癖のある茶髪が、風に揺れていたのを、今でも鮮明に覚えてる。


「すごく、カッコよかった……」


本心が、ポロリと口から零れる。

目がこぼれ落ちそうになるくらいに、見開かれた、一護の瞳。


< 94 / 211 >

この作品をシェア

pagetop