私の唇は、大好きなキミへ嘘をつく。


「椿?」

「あ、ごめん。紗枝とは、小学3年の時に同じクラスで…」


私は、消しゴム泥棒の疑いをかけられたとき、紗枝に助けられた話をする。


「紗枝らしいな……」

「う、うん………」


一護、紗枝の事を私から聞き出したいのかな。

それにしても、なんて優しい声で紗枝を呼ぶんだろう。
こんな風に、一護に想われる紗枝が羨ましい。


「お前も、優しい顔すんのな、椿」

「え、私……?あんまり、言われたことないけど」


まさか、話の矛先が自分に向くとは思わず、目をまん丸にして一護を見つめる。


「お前、今、すげぇいい笑顔だった」

「あ、ありがとう……」

そんな、ストレートすぎるよ、一護のバカ。

その言葉に勘違いする女の子だっているかもしれないんだよ?

ズズッと、底尽きかけたメロンソーダを飲み干す。

ヤキモキして、食べ方が下品じゃないか…とか、そんなことを気にしていたら、昼ごはんの味なんて全く感じられなかった。


< 96 / 211 >

この作品をシェア

pagetop