リストカット依存症
“事件”と言うと、大げさかもしれない。
終業式の日の夜
わたしは父親に叱られた。
その日の父親は、いつになくピリピリしていて
怒らせることがないように、わたしも弟も気を付けていた。
しかし些細なことがきっかけで、わたしは父の逆鱗に触れたのだ。
平手打ちを二、三発食らい、拳で顔を殴られた。
一度キレた父親は、誰も抑え様がない。
「お前みたいな娘、いらん!
一生、死ぬまでこの部屋から出てくるな!!」
わたしは真っ暗な部屋で、頬を押さえて泣いた。
――普段温厚なだけ、怒らせると恐い人だ。
否、あれはもう恐いの域を越えている。――
わたしは、床に転がった鏡を睨んだ。
赤く腫れた頬が、不様だった。
「いらないんだったら……何で生んだんだよ!!」
わたしは鏡を叩き割った。
そして、カッターナイフを手首に当て、力を込めて引いた。
今までに見たことない量の血が出てきた。
不思議と、痛みはなかった。
ボタボタと血が流れ出て
床に赤い斑点を作った。